電話と親不孝

二晩続けて、母親が死ぬ夢を見た。

夢の中で彼女は、どうやら大腸ガンだったらしいのだが、告知されないまま死んでしまった。 僕はなぜか「大リーガー養成ギプス」を着けて、彼女の最期を看取っていた。 なんだか不安になったので、久しぶりに母親に電話をしてみた。 彼女はこの前に会った時と同じように元気そうだった。 さすがに、「お母さんが死ぬ夢を立て続けに見たから」とは言えずに、「最近お腹が痛くなったりしない?」と、僕は遠まわしに尋ねてみたのだが、別になんとも無いようだった。

それよりも、唐突に電話をかけてきた息子に対して、「何か辛いことでもあったのではないかしら?」と心配している様子だった。 普段は連絡を取っていないので、たまに電話をすると、これだからいけない。 仕事のことや、朝の食事のことなど、根掘り葉掘り尋ねられた。

なんだか話が長くなりそうになったので、話題を家族の近況に代えてみた。 ホストをしている弟は、最近あまり家に帰っていないらしい。 でも母親はあまり気にしていないようだった。 まぁ、もう23歳になるのだから、彼も色々あるのだろう。

「お盆の頃には帰るから」と約束して電話を切ったのだが、話の途中から早く電話を切りたくてしょうがなかった。 親と電話をしているといつも、自分が親不孝に思えてしょうがないのだ。 普段親のことなど100%忘れて生活しているからだろう。 まあ、それでも、みんな元気そうで何よりだった。

playback  いちょう、ひらり。 2000.06.23

スターバックスと個人的趣味

スターバックスが嫌いだ。 全席禁煙だし、渋谷のハチ公口の店が象徴する、商業主義・宣伝主義的なところも嫌いだ。 食器を洗うための人件費をカットするために、陶器じゃなくてプラスチックの容器を使うのも嫌いだし、ホットコーヒーに蓋がついていて、それを付けたまま飲むスタイルも、コーヒーの香りが楽しめなくて嫌いだ。 「コーヒーの香りを楽しんで頂くため」に禁煙にしているのに、ホットコーヒーに蓋がついているのは、矛盾しているのではないだろうか。

それでも世はスターバックスブームみたいだ。 なんと言っても内装がお洒落だし、コーヒーやスムージーは甘い味付けだ。 最近流行りのエスプレッソも、ドトールよりは美味しい。 それは、「女性客のリピーターを捕まえれば儲かる」という飲食店の基本にのっとっている。

じゃあ、お前がスターバックスに行かなければいい。ということになるのだが、それにしても何だかやるせない。 「売ろう、儲かろう」と言って本当にその通りになっているのを見ると、日本の音楽シーンのヒットチャートを思い起こさせる。 そして僕はモーニング娘が嫌いだ。

ここまで書いておいて何なのだけれど、僕は今日も、神保町のスターバックスに行ってしまった。 あの甘い「カフェモカ」の虜になってしまったのだ。

今の世の中、「嫌い」だからと言ってそれを全部避けることはできない。

playback  いちょう、ひらり。 2000.06.18