仕事に行く途中、永田町の駅で乗り換えた。 永田町駅は地中深くにある。 国会議事堂の地下には核シェルターがあるという都市伝説を思い出す。 真偽の程は分からないが、南北線は永田町を通る地下鉄の路線の中でも、一番深くを走っている。 というわけで、僕は今朝も、僕の人生で出会った中で、一番長いエスカレーターに乗っていた。
エスカレーターの頂上を見て昇っていると、赤ん坊を抱えたお母さんが、隣のエスカレーターで降りてきた。 その後ろにはOL風の女性が立っていて、お母さんの肩越しに、赤ん坊の顔を見つめていた。 そしてその女性は、赤ん坊に対して、微妙(?)な微笑を見せた。 舌を出して、眉毛を上げて見せた。
それは、とても微妙な表情だった。 彼女は赤ちゃんのご機嫌が取りたくて、そんな表情を作ったのだろう。 僕もよく同じようなことをする。 でもその表情は、なんと言うか、「ぎりぎり」だった。 いや、ぎりぎりを微かに超えていたかもしれない。
僕はお昼ご飯を食べた後、久々の青空を見ながら寝転んでいたら、その、「ぎりぎりの笑顔」をふと思い出してしまった。
赤ちゃんはすごい。 大人を無防備にさせる何かがある。 これからは気を付けよう。と思った。
playback いちょう、ひらり。 2000.06.27