ビルの建て方

もう、けっこう随分、大人になったのに、ビルの建て方がわからない。

もちろんちょっと調べれば、知識として知ることができるけど、実際に一人では建てられない。ビルどころか、掘っ立て小屋でさえ建てられない。きっと大雪が降ったら潰れてしまう。

小さな頃は、大人になったら、ビルが建てられるだろうと思っていた。
ホームランもバンバン打てるし、電車も運転できると思っていた。
でも実際は、こんなに大人になったのに、僕は何一つできない。

「そんなの、できなくて当たり前じゃん」って今は思う。
「じゃあ代わりに何ができるの?」とも思う。

電車を待つホームで、母親に「大人になったらできる?」と質問して、「できるよ」という答えを聞いて安心していたあの頃。
大人になった今、電車の運転士になった自分を想像してみても、いまいちしっくりこない。僕はなるべくして今の職業を選んだみたいだ。

できることは少ないけれど、好きなことはたくさんあるから、まあいいかな。
そういえば、ホームランも何回か打てたし。

東京ラブストーリー (続編)

今週の月曜(2016.01.25)発売の「ビッグコミックスピリッツ」に「東京ラブストーリー」の続編が読み切りで掲載されている。

連載終了から25年たち、50歳になった主人公たちを描いているとのこと。
子供時代に「トレンディードラマ」を観て育った世代としては、いま読んでおかないと、いつかふと思い出した時に後悔しそうだったので、少し不安を抱きながら読んでみた。

あまり期待していなかったのだけれど、読み終わったら、さわやかな気持ちになった。

もちろん一話読み切りなので大したストーリーはなく、「おまけ」みたいな話なんだけれど、なぜこんなに爽やかな気持ちになるんだろう?さっきから腕を組んで考えているのだけれど、なかなか言葉にできにない。

考えた。

ひとつめ。
東京ラブストーリーの続編を読みながら、主人公たちが漫画の中で25年前のできごとを振り返るのと同時に、僕は自分自身の25年前の時代的な空気や個人的なエピソードをなんとなく思い出していた。
25年前のことなんて、嫌なことはすべて忘れてしまって、楽しいことしか覚えていない。あんなに後悔したことも、いまとなっては自分らしさの素になっている気がする。遠くから見るととても綺麗に見える。でももちろん、もう近寄って手に触れることはできない。
ノスタルジックな思いを、自分だけでなく、登場人物たちと共有できる感じ。

ふたつめ。
主人公たちは、25年前のこと、25年前から現在までのこと、これからのこと、すべてをなんの迷いもなく100%前向きに肯定していた。読んでいる僕も、いまのところ自分の過去は後悔のないものだし、これからも素晴らしいものになる気がすると、前向き思えたからこんなに爽やかな気持ちになったのかもしれない。
このめちゃくちゃにポジティブな感じ。

というわけで、25年前のことを覚えていて、性格が割とポジティブな人にはおすすめだと思います。