微熱

前の晩から様子がおかしかったのだが、朝目を覚ますと扁桃腺がぷっくりとと腫れていた。 喉が痛くて唾を飲み込むことも出来ず、耳と歯茎と頭がズキズキと痛んだ。
とりあえず仕事場に電話を入れる。「病院に寄るので少し遅れます」

今年の4月にこの街にやってきて、病院に行くのは初めてだ。 駅に行く途中にある病院は内科の病院だっただろうか、と思いながら家を出る。 遅刻の電話は入れてあるので、ゆっくりと歩く。 穏やかな火曜日だ。 世界がいつもよりゆっくりと動いているように感じられる。 それは微熱のせいだろうか。
毎朝通る道なのに、ほんの少し太陽の位置が高くなっただけで、全く違った雰囲気がする。 この平和さ加減は何なのだろう?

目当ての病院に着くと、看板には「内科・精神科」と掲げられている。 やや不安な気持ちで扉を開き、受付に受診票を書いて出す。
しばらくして受付の女性に名前を呼ばれる。
「今日はどうなさいましたか?」
「喉が腫れちゃったんですけど」
「そうですか、風邪ですか。。」
すると女性の後ろから男に人がやって来る。
「すいません、うちは精神科専門なんですけど」

待合室の雰囲気が何かおかしかったんだよなぁ、と思いながら、扉を開けて外に出る。 理不尽な気がしないでもないが、それよりも何だか可笑しくてしょうがない。 これも微熱のせいだろうか。

男の人に教えてもらった近くの内科医を訪ね、抗生剤と鎮痛剤と胃薬をもらう。 コンビニで栄養ドリンクを買い、線路の脇で薬といっしょに飲み干す。
空はあくまで高く青く澄んでいる。 今日は遅刻日和だな、と思いながら再び歩き出す。 小学生の頃と変わらない。 風邪を引くと、なぜかワクワクしてしまう。

playback  いちょう、ひらり。 2000.11.28

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