懐中電灯

病院の受付のバイトが終わった帰り道、家のすぐ近くで、初老といってもいいくらいの齢の男が、二人の警察官に囲まれていた。  男は何故かモモヒキ姿だった。 ただの酔っ払いか、それとも露出狂なのか、傍目には分からなかったけれど、お巡りさんの一人は困ったような顔をしていたから、きっと酔っ払いなのだろう。

男は靴を履いたまま、ベルトの通ったズボンを履こうと努力しているのだけれど、ズボンの中に足が通らず、何度もよろけていた。 それを二つの懐中電灯の光が照らしていた。 3人とも、「まいったな」という顔をしていた。

いつもならそれを見てクスっと笑みを浮かべるところだけれど、今日は疲れすぎているのか、僕の頬は硬直したままだった。

ところで昨日は木枯らし1号が吹いたそうだね。 寒くて、静かな世界だ。

playback  いちょう、ひらり。 2000.10.18

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