浅草橋で外壁クリーニングの仕事をしていました。 ロープにぶら下がって懸命に壁を磨いていたら、隣の同僚たちが何やら興奮した様子で地上を見ていました。 見ると、少し離れた交差点で、乗用車がなぜか横倒しになっていました。 野次馬がどんどん増えていって、パトカーが来て、救急車が来ました。
一体どうやったら乗用車が横倒しになるのかは分かりませんが、とにかくその黒いワゴン車は一人ぼっちで横倒しになっていました。 低く鳴り続けるクラクションが、「いかにも」という感じでした。 施工記録用のカメラを持って事故現場に駆けつけた同僚(29歳)によると、運転手らしき若者は、たいした怪我もなくて、ただオロオロしていたそうです。
全くこの世の中は、「なんでもあり」なんだなと、つくづく思いました。 一瞬先は闇というか、よくもまぁ、僕もあなたも無事で生きているものです。 なにごともなく過ごしている僕もあなたも、周囲にはいろいろな可能性が満ちているのだけれど、今まではただ運が良かっただけなのかもしれない。
それにしても、誰も怪我をしなかったのはよかったのだけれど、僕は運転手が少し気の毒に思いました。もし僕がそんなド派手な事故を起こしたら、死なない程度に足の骨を折るくらいの怪我を負って、少しでも野次馬たちの哀れみを買いたいです。 もし無傷であっても、怪我をしたフリくらいはするかもしれません。 こんな僕を許してください。 人は誰でも主人公になりたがっているものではないでしょうか?
playback いちょう、ひらり。 2000.10.14