退屈

今日は一日中雨降りだった。 あまりにも暇なので、ハードディスクのデフラグをしてみた。

デフラグって好きだ。小さな四角が少しずつ整理されていく画面を見ているのは楽しい。 2時間近くじ〜っと画面を見つめていた。
乾燥機の中の洗濯物が回っているのを見るのも好きだ。飽きそうで飽きない。だんだん乾いていく様を観察しているのは楽しい。海の波が寄せたり引いたりしているのを見ているのも好きだ。

昔はじっと座って波を見ているなんて、とてもじゃないけど退屈でできなかった気がする。
小さな頃は退屈に思えたことが、大きくなって退屈ではなくなるというのは不思議だ。小さな頃はものすごく楽しかったことが、大人になって退屈に思えるというのは、なんとなく理由がわかるけれど。

それは、僕が自分の周りの世界に対して強い愛着を持つようになったことと関係がある気がする。こういうのを、幸せと言ってもいいのかもしれない。

playback  いちょう、ひらり。 2000.05.20

無機質

「昨日初めて屋形船に乗りました。 屋形船の上から見る満月はとても綺麗でした」

とは、近所のモスバーガーの店頭に置かれた小さな黒板に、チョークで書かれていたコメントだ。 僕はこのコメントを見て、何か見てはいけない物を見てしまったような気がして、歩みを速めてしまった。

最近いろんな場所で、店先に置かれたこのような黒板をしばしば見かける。 「暑くなりましたね。ビールセット(500円)はいかがですか?」とか。 でも、近所のモスバーガーの黒板には、まるで営業と関係のないコメントがいつも書かれている。 「散歩にいい季節ですね。古河庭園にでもいってみようかな。」 「都電沿いはバラが綺麗だそうです」など。 おそらく店主の趣味なのだろうが、街中を歩いていてこういう私的なコメントを見かけると、僕は何か違和感を感じてしまう。
街中で落ちている手書きの手紙を見つけて、そこに書かれている文字が見えてしまったときのような。

屋形船の黒板を見て何も感じない人もたくさんいるに違いないが、僕は街にもっと無機質的なものを求めているのだろう。 とはいっても、下町感ただよう東京都北区西ヶ原に無機質なものを求めるほうが、たぶん間違っているのだが

playback  いちょう、ひらり。 2000.05.19