ナルシスト

ボクシングの世界ライト級タイトルマッチを見に、両国の国技館に行ってきました。 ボクシングなんて今までテレビで見るくらいだったけど、タダ券が手に入ったんです。

行きの電車で、挑戦者の坂本博之を見ました。 目の前の席に座っていたんです。 まわりを屈強な男たちに囲まれていたけど、顔を知っていなければ、とても世界タイトル挑戦者には見えないような、普通の人でした。 国技館まで彼らの後ろをついて行ったら、ダフ屋の兄ちゃんが券を売ろうとしていて、おやじに怒られていました。 それくらい、「ただの兄ちゃん」ぷりを発揮していたんです。

前座の試合がたくさんありました。 名もないボクサーがたくさんいました。 「背筋」に惹かれました。 背中が引き締まっているってうらやましい。 僕の背筋は、ややぶよぶよなんです。

最近、精悍になりたいと、こっそり思っています。 ハングリーに生きたいと思っています。 ややMの気があるのでしょうか、自分をいじめてみたくなります。 狼の目を持ちたい。 野生の血が騒ぐぞ。 オレは強くなるんだぁ。

なんて、想像していたとおり、ボクシングを見たら、「にわか心意気だけボクサー気分」になってしまいました。 任侠映画を見たら、なんだか強くなった気がするように。

ナルシズムを大いに刺激された一日でした。

playback  いちょう、ひらり。 2000.03.12

運命

今日も仕事に行きました。 ええ。ちゃんと朝7:30に池袋の事務所に着きましたとも。 今日の現場は埼玉の菖蒲高校でした。 仕事の内容はというと、なんとトイレ掃除でした。 そうです。僕は今日もまた、マニアックな技術を一つ手に入れました。 便器がこんなに綺麗になるなんて、さすがプロのテクニックだ。 今度あなたのトイレを掃除させてください。

でも、うちはガラス屋じゃなかったのか? どうなんだ? 一昨日なんて製鉄工場の塵粉清掃をしたんです。 全然関係ないじゃない。ガラスと。床とも関係ない。 不快だ。 いくら仕事がないからって、そんな仕事とってこなくてもいいじゃないか。

高校のトイレは果てしなく汚かった。 4人で120個の便器を磨きました。 一人あたま30個の便器。 何時間も便器を磨いていると、便器が便器に見えなくなってくる。 僕に磨かれるためだけに存在している白い陶器。 軽石と硬いスポンジと紙やすりによって美しく輝き出す。 できれば僕が磨いた白い陶器に用を足すなんてことはしないで欲しい。 これは芸術品なんだ。 僕は便器を磨くために生きてるんじゃない。 それは確かだ。

今の会社を辞めてもいい。と本気で思った。 でもまだロープで屋上からぶら下がってビルの窓の外側を拭いていないので、辞めるわけにはいかないのだ。 社長、ガラスを磨かせてください。お願いです。 僕はガラスを磨くために生まれてきたんです。 ああ。

playback  いちょう、ひらり。 2000.03.11