5月

今日は僕の誕生日だったりする。 もう24年間も生きてしまったわけだ。 24歳になった実感は余りない。 21歳になった時は、もうこの世の終わりだとオーバーに思ったりしたけれど、もうこの年になると、ただ年を積み重ねているだけ、という感じがする。

でも誕生日は好きだ。 というよりも、誕生日の季節感が好きだ。 自分が生まれた月だから、ひいき目で見ているのかもしれないが、1年の中で5月が一番好きだ。

特に5月の匂いが好きだ。 緑の香りが一番強いのは5月のような気がする。 朝と夜や、雨上がりの時などには、匂いの粒子が顔や手にあたっているような気がする。 今僕が住んでいるところは、近くに大きな庭園があったり、庭の大きな古い家が多かったりで、東京区内でも割合に緑の多いところなのだが、仕事帰りに湿った緑の匂いをかぐと、一人心苦しくなったりする。

そんな時、僕は何か懐かしい感じがする。 何かを思い出すような、思い出さなければいけないような感じがする。 僕が生まれ育ったところは、そんなに滅茶苦茶多くの緑に囲まれたところではなかったのだが、木々の匂いをかぐと何故か、14,5歳の頃をなんとなく思い出す。 そして胸の奥に何かを感じる。

僕は緑の匂いが好きというよりも、それを嗅ぐことによって何かを思い出しそうになる心苦しさが好きなのだろう。

でも僕は、その匂いを嗅いだ時に、いったい何を思い出せばいいのか分からない。 14,5歳の頃、緑の匂いの強い季節に、何か思い出に残るべき出来事があったのかもしれない。 だから今の僕は緑の匂いが好きなのかもしれない。 でもそれが何か思い出せない。 そんな出来事は無かったのかもしれない、とも思う。 緑の匂いが、ただ単純に脳をリラックスさせているだけなのかもしれない。
僕は何かを思い出さなければいけない気がする。 でも、思い出せない。

年をとるというのは、やはり悲しい。

playback  いちょう、ひらり。 2000.05.XX

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退屈

今日は一日中雨降りだった。 あまりにも暇なので、ハードディスクのデフラグをしてみた。

デフラグって好きだ。小さな四角が少しずつ整理されていく画面を見ているのは楽しい。 2時間近くじ〜っと画面を見つめていた。
乾燥機の中の洗濯物が回っているのを見るのも好きだ。飽きそうで飽きない。だんだん乾いていく様を観察しているのは楽しい。海の波が寄せたり引いたりしているのを見ているのも好きだ。

昔はじっと座って波を見ているなんて、とてもじゃないけど退屈でできなかった気がする。
小さな頃は退屈に思えたことが、大きくなって退屈ではなくなるというのは不思議だ。小さな頃はものすごく楽しかったことが、大人になって退屈に思えるというのは、なんとなく理由がわかるけれど。

それは、僕が自分の周りの世界に対して強い愛着を持つようになったことと関係がある気がする。こういうのを、幸せと言ってもいいのかもしれない。

playback  いちょう、ひらり。 2000.05.20

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