フライドポテトのこと

仕事帰りに飛び乗った電車は、フライドポテトの匂いに満ちていた。

こっそり周りを見渡すと、隣に座っているジャージ姿の高校生がマクドナルドの紙袋を抱えている。よく見ると、向かいのドアの側に立った女の子もマクドナルドの紙袋を持っていた。さらに、向かいのベンチシートの左端に座った女の子はモスバーガーだった。

郊外に向かう乗車率80%くらいの車両の中は、妙に静かだった。誰も話さない。
きっとみんな、ハンバーガーやフライドポテトのことを考えているのだろう。

モスバーガーとマクドナルドだったら、断然、マクドナルドのポテトのほうが好きだ。塩味の効いたフライドポテトの味を想像すると、猛烈にお腹が減ってきた。

仕事で頭が疲れていたせいか、うっかり「モス」と呟いてしまう。
車内の空気が少し震える。

にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です